確定申告で誤りやすい医療費控除
個人の所得税確定申告の還付申告は受付け始まっている
個人の確定申告は2月16日から3月15日までの1か月間で提出しますが、還付の人は1月からもう受け付けてもらえます。
早く申告書を提出したほうが、税務署も空いていますし早く税金が戻ってきますので、税金が戻ってきそうな人は早めに提出しておきましょう。
そこで、今回は確定申告の誤りやすい医療費控除の事例を紹介します。

医療を受けた時と支払った時で年をまたがったときの間違い
例えば、令和4年12月に入院治療を受け、令和5年1月に治療代を支払った時は、その支払った令和5年の医療費控除の対象となりますから、令和4年の確定申告には使えません。
また、令和4年12月にひとつの入院治療を受け、令和4年12月25日にクレジットカードで10万円の治療代を支払って、実際のカードの引き落としが令和5年1月28日だった時、その医療費控除はカード決済手続きを行った令和4年の医療費控除の対象となります。
また、さらにこの治療代が高額療養費の対象となり、令和5年4月になってから2万円キャッシュバックされたときは実際の医療費の負担は「結果的に8万円だけ」となりますから、医療費控除に含める金額は10万円ではなく8万円となります。このように確定申告が終わってから高額療養費として返金される可能性があるとわかっているときは、3月15日までに確定申告するときにあらかじめ返金される額を見込みで出して申告し、正確な金額が出たら再度申告を訂正することになります。普通よりも手間がかかりますし注意が必要です。できればこういう年末に近いタイミングで入院などしたくはありませんね。
生計が同じでない親の入院費を子が払った時、子が医療費控除の対象に含めている間違い

生計が同じでない親の入院費を子が払った場合、その入院費を子の医療費控除の対象に含めることはできません。医療費控除は、自分自身の医療費と自分と生計が同じ家族の医療費だけを合算することができます。
栄養剤、病院の駐車場代、謝金を医療費控除の対象としている間違い
医師等の診療等を受けるため直接必要な費用は、医療費に含まれますが、医師等の診療等に関係なく購入した場合は医療費控除の対象とはなりません。
医療費控除の対象とならないものの具体例
- 栄養食品等、主観的な判断で購入した食品
- 眼鏡、コンタクトレンズ
- 入院時の差額ベッド代
- 美容のための歯列矯正治療代
- ガソリン代、駐車場代
- 入院に付き添ってくれた人への謝金、心づけ
- 実家で出産するために実家に帰省する交通費
医療費控除の対象となるものの具体例
- 医師等の診療等で必要な義手、義足、松葉づえ、補聴器
- 眼科医で受けた視力回復レーザー手術費用
- 入院の対価として支払う部屋代、食事代等の費用
- 成長期の子のための不正咬合のための歯列矯正治療代
- 公共交通機関の通院費
- おむつ証明書のある場合のおむつ代
- 入院に付き添いが必要な時の、付添人の交通費
- 妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用
支払った治療代よりも多く受け取った保険金を全額医療費からマイナスしている間違い
生命保険会社の医療保険に加入されている方も多いと思いますが、入院するともらえる保険金があるときは、もらった保険金を医療費控除の計算でマイナス算入しないといけません。ただし、マイナス算入するのは対象となった医療費に対してのみであり、払った以上にマイナスにすることはありません。
★具体的な例
1月 | 耳鼻科 | 10,000円 | |
1月 | 歯科 | 16,000円 | |
2月 | 内科 | 15,000円 | |
3月 | 外科入院 | 100,000円 | |
4月 | 3月入院に対して 保険会社から保険金受取り | 120,000円 | |
10月 | 耳鼻科 | 12,000円 | |
12月 | 接骨院 | 20,000円 | |
合計 | 120,000円 | 173,000円 |
表のような1年だった場合に、年間で支払った医療費は143,000円です。
受け取った保険金120,000円は3月の外科での治療に対してのものですから、
外科の治療代100,000円は保険金でマイナスされて医療費負担額ゼロ円となります。
この場合の医療費控除の計算においての「支払った医療費合計」は年間73,000円となります。
10,000+16,000+15,000+12,000+20,000 = 73,000円
保険金を全体合計からマイナス算入してしまうと
173,000円 - 120,000円 = 53,000円となり間違いです。
気前よく引きすぎないように注意しましょう。
健康診断の費用を医療費控除の対象とした間違い
特定健康診査のための費用などは自己負担額が生じることがありますが、その費用は原則として医療費控除の対象とはなりません。
ただし、その特定健康診査の結果で病気が見つかり、引き続き医師の指示に基づき治療が行われた場合は、初めの特定健康診査の費用は治療に先立って行われる診察と同様に考えることができますので、医療費控除の対象となります。
確定申告するときは医療費の領収証を添付しなくてよい
確定申告するときに医療費控除を受けるためには、「医療費控除の明細書」を、所得税の確定申告書に添付する必要がありますが、個別の領収証を添付する必要はありません。ただし医療費の領収書は自宅で5年間保存する必要があります。
医療費の領収書が多い場合など、医療費集計フォームで入力すると便利です。
「医療費集計フォーム」は、支払った医療費の内容を表計算ソフト(エクセルなど)で入力・集計するためのフォーマットです。
「医療費集計フォーム」に入力・保存したデータは、確定申告書等作成コーナーの医療費控除の入力画面で読み込み、反映することができますので、医療費の領収書の枚数が多い方は、「医療費集計フォーム」を利用した入力が便利です。
医療費集計フォームのダウンロードをする
医療費通知(「医療費のお知らせ」など)を利用する場合は、「医療費集計フォーム」はご利用いただけません。
医療費の支払いが10万円以上なくても医療費控除を受けられることがある
医療費控除は、申告する方やその方と生計を一にする配偶者その他の親族のために、令和4年中に支払った医療費がある場合は、次のとおり計算した金額を医療費控除として、所得金額から差し引くことができます。

上記の計算式での所得の合計額とは、収入から必要経費を差し引いと残りのものをさすので、「給与収入から給与所得控除を引いたもの」、「公的年金から公的年金控除額を引いたもの」などの合計に当たります。
医療費控除のできる金額計算の例を挙げますと、
①給与収入300万円の人が家族で年間医療費12万円払った場合
給与収入300万円の人の給与所得控除額は、以下の表のとおり、300万×30%+8万=98万円です。
合計所得は300万-98万=202万円となりますので控除を受けるためには医療費が10万円以上必要で、医療費控除額は2万円です。
医療費控除額・・・(12万円-0円)- 10万円 = 2万円
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円から1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
②給与収入200万円の人が家族で年間医療費8万円払った場合
給与収入200万円の人の給与所得控除は表のとおり、200万×30%+8万=68万円です。 合計所得は200万-68万=132万円となります(所得200万円以下)。
ですので控除を受けるためには医療費が10万円以下でも対象となります。医療費控除額は1万5千円です。
医療費控除額・・・(8万円-0円) - (132万円×5%)= 1万4千円
②のように申告する方の所得が200万円以下であれば支払った医療費が10万円以下であっても医療費控除を受けられる可能性があります。所得税だけでなく住民税の減税にも効果がありますので医療費10万円以下でも減税のチャンスはないか今一度確認してみましょう。
まとめ
以上、医療費控除の申告が不慣れな方のために注意点を紹介しましたがいかがでしたか?
医療費控除で得られる減税効果はそれほど多くはないかもしれません。
しかし、こういうコツコツした節税の積み上げが結果的に自分の利益に帰ってきますから、面倒と思わずに「まずはやってみよう」、「計算で確認だけしてみよう」と手を動かすことが自分が得するための第一歩です。
少しでも皆様の生活にお役に立てれば幸いです。
よろしければ次回も読んでください。