独立開業するために退職しても失業保険はもらえるのか?

会社員の副業が今のブームですが、副業が高じて独立開業しようと考えている人も中にはいるかと思います。会社をやめて、個人事業主として開業したら失業保険はやっぱりもらえないの?今まで雇用保険料を払い続けていたのはどうなるの?というのが引っかかる人もいるかもしれません。今回は、独立開業したときに、自分の失業保険をもらえる権利はどうなるのか?という点を解説したいと思います。

自己都合で退職したときの失業保険は、雇用保険の被保険者期間の長さでもらえる所定給付日数が90日、120日、150日のいずれかに決まります。長年雇用保険料をしっかり納めてきた人なら、退職後に失業保険をたくさんもらって報いを得たいと思うことでしょう。ただ、失業保険をもらえる条件は失業している状態であること、が肝になってきます。

もし退職後に独立開業したら、自分の失業保険をもらう権利はどうなるのか、これに対する結論ですが、開業したら就職の届け出が必要で、開業日以降の失業保険は停止されます。つまりもらえません。

えー、今まで払ってきたのにもったいなーい、と思いますよね。

ただし、二つのチャンスがあります。

チャンス①開業したら、その時点で失業保険はもらえませんが、再就職手当がもらえる可能性はあります。

チャンス②開業したときから基本手当はもらえませんが、受給期間の延長を申請することで、その事業を廃業したら再度失業保険がもらえることがある

これら二つの条件を解説いたします。

  • チャンス①独立開業して再就職手当をもらう

再就職手当について、これをもらうための条件は次の通りです。

雇用保険(基本手当)の所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して、安定した職業に就き、支給要件を全て満たした場合に、再就職手当が支給されます。

支給要件は、下記1.から8.までの要件を全て満たすことが必要です。

1.就職日の前日までの失業の認定を受けた後の基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること。

2.1年を超えて勤務することが確実であると認められること

3.待期満了後の就職であること

4.離職理由による給付制限を受けた場合は、待期満了後1か月間については、ハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介により就職したものであること

5.離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと

6.就職日前3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていないこと

7.求職申し込み前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと

8.原則、雇用保険の被保険者資格を取得する要件を満たす条件での雇用であること

※  1.の支給残日数については、就職日から受給期間満了年月日までの日数を超えるときは就職日から受給期間満了年月日までの日数が支給残日数となります。

その支給額は以下のとおりです。

【基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上の方】

基本手当日額(※)×所定給付日数の残日数×70%

【基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上の方】

基本手当日額(※)×所定給付日数の残日数×60%

(※)再就職手当に係る基本手当日額には、上限額があります。なお、この金額は、「毎月勤労統計」の平均定期給与額により、毎年8月1日に改定されます。

まず1番の基本手当の支給残日数が3分の1以上あること、というのは、例えば所定給付日数が90日の人ならまだもらっていない基本手当の日数が30日以上残っている人のことです。再就職手当は早期に再就職した人に対する就職祝いと考えてください。これは、自分で事業を開始したときも再就職に当てはまります。どのタイミングで見るかというと原則的には税務署に出す開業届の記載の日付で判断します。

また、3番4番の条件を見てもわかりますように開業が早すぎてもだめです。待機を満了した後でなければ再就職手当の対象とはなりません。そして自己都合退職した人は待機期間満了後さらに1か月以内はハローワーク等の紹介の就職しかだめだと書いてあり、逆に言うと1か月以上たってからならどういう経路で再就職しても再就職手当の対象となります、つまり独立開業する人は1か月たってから開業届を出すようにしてください。

再就職手当により、基本手当をだらだら90日以上かけて受給するよりも、失業保険の全額ではないですが結構まとまった手当が入金されますのでとても助かります。

参考までに一例をあげます。所定給付日数90日基本手当日額4500円で自己都合退職した人が、待機満了後1か月ちょっと経ってから独立開業したとき。まだ1日分も失業保険をもらっていないうちに、再就職したことになりますので、支給残日数はもちろん3分の2以上残っていますから、受給額は

 4500円×90日×70%=283,500円と計算できます。

  • チャンス②受給期間の延長を申請して廃業したときに基本手当をもらう

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000952085.pdf

雇用保険(基本手当)を受給できる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。しかし離職後に事業を開始した方について、事業の実施期間は受給期間に算入しない特例があります(受給期間の特例)。離職日の翌日以後、上記に該当する方は、本来の受給期間1年間に最大3年間、受給期間に算入しない期間を特例として申請することができます。

これはどういうことかといいますと、独立開業した方が、事業を開始したものの、3年たってからやっぱり仕事として成り立たないと判断し廃業したあと、再就職活動を再開することで失業保険をもらえるというものです。元の会社にいたときの雇用保険を生かせるチャンスを再度引き寄せられるというありがたい制度です。この制度を利用するためには、開業してから2カ月以内に受給期間の延長の申請をする必要があります。

特例申請の要件

  • 事業の実施期間が30日以上であること
  • 「事業を開始した日」「事業に専念し始めた日」「事業の準備に専念し始めた日」のいずれかから起算して30日を経過する日が受給期間の末日以前にあること。
  • 当該事業について就業手当、または再就職手当を受けていないこと
  • 当該事業により自立することができないと認められる事業ではないこと
  • 離職日の翌日以降に開始した事業であること

チャンス①で解説しました再就職手当をもらった人はこの延長制度は利用できないので注意です。

4番の自立した事業と認められるためには、雇用保険に入るような人を雇うほどの事業であるか、または登記事項証明書や開業届の写し、事業許可証等の客観的資料で事業の開始と事業の内容の実態が確認できることが必要です。また、2番目の意味ですが、本来の受給期間1年間ですが、その終わり間際になってから延長申請はできませんという意味です、いいかえれば離職してから11カ月たってからでは遅いという風に理解してもらえればいいかと思います。

以上、会社を辞めて独立開業した人の雇用保険の活かし方について解説いたしました。

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